松山地方裁判所 昭和50年(少)6832号 決定 1976年3月30日
少年 D・H(昭三四・五・一〇生)
主文
この事件を愛媛県中央児童相談所長に送致する。
理由
一 非行事実
少年は、
第一 公安委員会の運転免許を受けないで昭和五〇年九月二〇日午後五時四〇分ころ愛媛県松山市○○町所在の○○病院付近道路において、軽二輪車を運転した
第二 法定の除外事由がないのに上記第一記載の日時場所において、同二輪車を運転して道路右側部分を通行した
ものである。
二 法令の適用
(1) 第一の事実につき、道路交通法一一八条一項一号・六四条
(2) 第二の事実につき、同法一一九条一項二号の二・一七条三項
三 主文決定の理由
本件少年の最大の問題点は心身鑑別の結果にも指摘されているように、重症魯鈍級の精神薄弱で精神面の発達が著しく遅滞しているにもかかわらず今まで学校教育の点および家庭教育の点において少年の能力に応じた適切な指導がほとんど行われることなく放置されて来たことであり、そのため少年は昭和五〇年九月一二日当裁判所において前件の占有離脱物横領、道路交通法違反保護事件によつて松山保護観察所の保護観察処分に付されたにもかかわらずその処分は少年にとつて全然といつてよい程内面化されないまま本件に至つていること、その外本件非行の内容、少年の年齢、性格、これまでの生活史および家庭環境等本件の調査審判に現われた諸般の事情を総合して判断すれば、本件は、家庭裁判所の保護事件として取り扱うよりも、児童福祉法に基づく児童相談所長の保護措置に委ねることが相当と思料される。
よつて、少年法二三条一項・一八条一項・少年審判規則二三条を適用して主文の通り決定する。
(裁判官 榊五十雄)
昭和五〇年少第六八三二号
処遇勧告書
愛媛県中央児童相談所長 殿
昭和五一年三月三〇日
松山家庭裁判所
裁判官 榊五十雄
少年 D・H 昭和三四年五月一〇日生
上記少年について本日貴庁に送致する旨の決定をなしたところ、本少年は右決定の理由中に指摘した通り、重症魯鈍級の精神薄弱者であるにかかわらずこれまで適切な指導が施されないまま本件に至つたものと考えられます。
そこで本件少年に対しては行政措置上可能な限り格別な配慮をもつて早急に精神薄弱児施設に措置され将来少年の自立に資する基本的生活訓練および職業訓練が施されるよう少年審判規則三八条二項の趣旨に準じて勧告します。
以上